「フレイルになると要介護リスクが4.7倍」という真実

「フレイルになると要介護リスクが4.7倍」──見逃したくない身体からのサイン

「最近、少し疲れやすくなったな」

「歩き出しが、なんとなく重くなった気がする」

そんな小さな変化を感じたことはありませんか?

もしかするとそれは、フレイル(虚弱)の始まりかもしれません。

フレイルとは、加齢に伴い体力や筋力、認知機能、社会性などが少しずつ低下していく状態のこと。見た目には元気そうでも、体の中では着実に“衰え”が進んでいるサインともいえます。

このフレイル、実は「放っておくと要介護状態になるリスクが約4.7倍にもなる」と言われているのをご存じでしょうか?

■ フレイルがもたらすリスク──厚生労働省の調査より

厚生労働省(2021年 NCGG)の調査では、フレイルの高齢者は健常者と比べて、要介護状態になるリスクが約4.7倍高いという結果が出ています。

この数字は私たちにとって、決して他人事ではありません。健康に見えても、筋力や体力が少しずつ落ち、知らず知らずのうちに“介護リスクの高い体”へ近づいていく。フレイルは、そんな静かで、でも確実に進む変化です。

「今は元気だから大丈夫」──そう思っていた方が、ある日ちょっとした転倒や風邪をきっかけに急に身体機能が落ち、回復が難しくなるケースは少なくありません。

■ フレイルの主な特徴は「動きの質」に出る

フレイルの兆候は、歩行速度が遅くなる、立ち上がりにくくなる、疲れやすくなる、など日常のちょっとした動きに現れます。なかでも特に大切なのが、「体位変換力」です。

体位変換力とは、寝返り、立ち上がり、しゃがむ、歩き出すといった姿勢をスムーズに切り替える力のこと。これは介護の世界でも注目されていて、この力が衰えると、自立した生活が難しくなり、要支援・要介護につながる可能性が高まります。

つまり、「今の生活をずっと自分の力で続けていくためには、体位変換力の維持が欠かせない」ということなのです。

■ フレイルを予防するには──やっぱり“運動習慣”

では、フレイルを防ぐにはどうすればいいのでしょうか?

答えはシンプルです。定期的な運動習慣を持つことです。特に、

  • 筋力を維持・向上させる運動

  • バランス感覚を養う運動

  • 体位変換を意識した動きのトレーニング

などが非常に効果的とされています。

「でも、何をすればいいかわからない」

「一人だと続かない」

そんな方も多いと思います。

大切なのは、無理なく楽しく、でも目的をもって動くこと。そのために専門的な知識を持つ指導者のもと、安全で効果的な運動を続けることが、今後の健康を守る大きな支えになります。

■ あらためて「体位変換力」の大切さを意識する場として

すでにご存じの方も多いかと思いますが、当院では50歳以上の方を対象に、体位変換力の維持・向上をテーマにした「はなつる体操教室」を開催しています。

寝返りや立ち上がりなどの基本動作を見直し、「動ける体」をつくることを目的としたプログラムです。

すでに実践されている方の中には、「膝が軽くなった」「動き出しがスムーズになった」「疲れにくくなった」といった嬉しい声をたくさんいただいています。

「やっぱり、日常の“ちょっとした動き”を鍛えるって大事なんですね」

そんな実感を持たれる方が増えている今、あらためてご自身の体の変化に目を向けてみてはいかがでしょうか。


フレイルは、ある日突然訪れるわけではありません。

静かに、気づかぬうちに進行していきます。

だからこそ、今のうちからの“備え”が、未来の自由な生活を守ってくれるのです。

すでに参加されている方も、これから参加を検討される方も、ぜひ今後も「体位変換力を保つこと」の重要性を意識しながら、日々の生活を見直してみてくださいね。